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調和的でサスティナブルな社会・経済システムとは?変化の激しい世界で歩きながら考える。

便利で不都合なバイアス

情報分析の世界には、「ヒューリスティクスの問題」「マインドセットの問題」というものがあり、インテリジェンス研究や心理学において研究されているそうだ。

判断や評価をするさい、私たちは下記のように、一つ一つ、コツコツと思考を積み重ねて結論を導き出すことができる。

A → B → C → D → E

このようにAから順を追ってEという結論へいたる思考手順を「アルゴリズム」という。しかし、何でもいちいちアルゴリズムで思考していては、会話も日常生活もスムーズに進まなくなってしまう。ヒューリスティクスをもちいて、

→ B → C → D →
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AからいっきにEへたどり着いてしまえば素早く便利だ。私たちは、日常生活では無意識にこのヒューリスティクスを使っている。たまに間違ったりすることはあっても、ほとんどの場合はこれでスムーズに上手くいくからだ。

たとえば、あなたの知人が、「量販店で買った1枚1000円のシャツを着ようとしたら、まだ一度も袖を通していないのに縫い目がほつれていた」と言ったとしよう。それを聞いたあなたは、そのシャツが○国製で、日本人によるきちんとした検品がされていなかったのだろうと考えるかもしれない。実際に○国製だったならば、あなたはヒューリスティクスにより素早く正しい判断をしたことになる。だが、もし予想に反して日本製や他の外国製だった場合は、あなたは思考のバイアスにとらわれて正しい判断ができなかったことになる。

このように、何度も同じような経験をすることによってつちかわれた“先入観”や“偏見”は、強いバイアスとなると同時に、日常生活においては非常に役に立つものだ。バイアスは、その人の文化的・宗教的バックグラウンドによって生ずることもあるし、個人的な利害関係によって生ずる場合もある。自分にそのような傾向があると意識することで、完全ではないにせよ、バイアスの影響からある程度逃れることは可能だろう。
しかし、実はもっと始末の悪いバイアスも存在する。それは、「コグニティブ・バイアス(認知心理学バイアス)」という、無意識のうちに生ずるバイアスだ。

参考文献: 『仕事に役立つインテリジェンス 問題解決のための情報分析入門』 北岡 元・著