... listening to 4'33" 

調和的でサスティナブルな社会・経済システムとは?変化の激しい世界で歩きながら考える。

civilization & culture

ピダハンについて 8

これまでピダハンの言語と文化の特徴をいくつかピックアップしてきたが、それらの多くがエヴェレットのいう「直接体験の法則」に由来しているようである。彼らは「今」に生き、過去や未来に心を煩わせない。ピダハン語には「心配する」に相当する語彙がない…

ピダハンについて 7

ピダハンの文化と言語にはユニークな特徴がいくつもあるが、中でも興味深かったのは、彼らの社会に神話というものが一切存在しないことだった。 人類学では、どの文化にも自分たちのルーツや世界がどのように出来たかを説明する物語、いわゆる「創世神話」が…

ピダハンについて 6

ピダハンは、私たちが普段何気なく使っている方向や方角を示す表現も、けして普遍的なものではないことを教えてくれる。 私は、人間は(他の多くの動物も)眼と他の五感を使って自分の棲む世界を見たり感じたりしているのだから、まず自分中心に外の世界を捉…

ピダハンについて 5

交感的言語が無い以外にも、彼らの言葉にはユニークな特徴がある。 まず、ピダハン語には比較級―「これは大きい、あれはもっと大きい」のような表現がない。また、完了した過去を語る叙述も見当たらなかったそうだ。 それだけではない。赤、青といった色彩を…

ピダハンについて 4

言語学には「交感的言語」という用語がある。「こんにちは」「さようなら」「ありがとう」「ごめんなさい」のような、何か新しい情報を提供するものではないが、単に相手を認めたり、善意や敬意を表したりして、社会や人間関係を維持する働きをする言葉であ…

ピダハンについて 3

前回の記事で書いたように、ピダハン社会には権力や個人に対する集団からの強制というものがほとんどない。それだけでなく、プライベートな人間関係においても、他者に指図するようなことは基本的によしとされない。そして、これは子供のピダハンに対しても…

ピダハンについて 2

人間は、なかなか自分がどんな偏見や先入観を持っているか気がつかないものだ。私も例外に漏れず、エヴェレットの本を読むまでは、いわゆる先住民と呼ばれる人々の社会に対して間違った思い込みを抱いていた。 その一つが、どのような人間社会にも(そしてお…

ピダハンについて 1

本当に読む価値のある本というのは、自分の先入観や固定観念を壊して、価値観や認識の見直し・変更を迫るような内容のものだと思う。以前『凡才の読書術 2』でも書いたが、私たちはともすると自分が何となく感じていることを支持してくれるような情報ばかり…

今も続くパンとサーカス

TVは朝の情報番組くらいしか見ないのだが、その芸能ニュース・コーナーで、よくアイドルのコンサートの様子が映し出される。派手なステージ演出と、LEDライトを手に総立ちで興奮する観客の姿。その異様な盛り上がりを見せる情景にふと、「ローマのコロ…

世界のスーパーアイドルがおわす場所

ナポリの港に、巨大マンションのようなフェリーが停泊していた。このような豪華客船の乗客がイタリアの港に着いたとき、必ず訪れるであろう場所が、ヴァチカンだ。観光客で賑わうサン・ピエトロ広場には、まるで屋外コンサート会場のように、大スクリーンが…

家紋は正露丸?(勝手に商標使ってスミマセン)

素朴な疑問だが、貴族や王族とよばれる人たちは、一体いつ、どのようにして、その身分になったのだろうか? 超古代、まだ親族を中心とする小グループしか存在していなかった頃から、グループ同士の戦いと略奪により、少しずつ領土や財を増やしていったファミ…

海辺で生きるということ

この前、海に行ったのはいつだったろう?思い出せないくらい海に興味がないのだが、数年ぶりに海で船に乗った。 海辺で暮らす、海と共に生きるとは、どういうことなのだろう?船上で波に揺られながら、そんなことを考えた。海の波をコントロールすることはで…

武力で征服は同じなんだけどね

「インカ展」がそれほど面白かったわけでもないのに、思いのほかインカネタを引っぱってしまった。 過去にペルー、ボリビアを訪れた経験もあるが、以前読んだ『環境と文明の世界史―人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』の次の内容が頭に残っていたからだ。 …

貨幣を生む発想、生まない発想

難民キャンプや捕虜収容所のようなところでも、市場が自然発生する。第2次世界大戦中の捕虜収容所では、タバコが通貨の役割をしていた。そのような交換媒体がすぐにできたのは、そこにいた人々が、もともと貨幣経済の中で生活していたからだろう。しかし、…

「ハガレン」じゃないけど

インカ絡みの記事を書いていて、ふと「等価交換」という言葉が浮かんだ。 人間が神に生贄を捧げるのは、豊穣や天災の終息など、自分たちの願いを叶えてもらうためや、すでに受けている恩恵への返礼なわけだが、かれらは捧げ物や儀式と、願い事や恩恵が釣り合…

互恵社会と生贄文化

インカ社会は互恵制度に基づいていた。それは、インカ帝国の征服・支配方法にもあらわれている。 王は、征服した集団の指導者に、ふんだんに贈り物を与える。征服された側は、それに対して拒否も出来なければ、等価の返礼をすることも許されず、服従すること…

インカ帝国の統治システム

時代的にはかなり新しいにもかかわらず、インカ文明の資料は豊富とはいえない。 その理由の一つは、もちろんスペイン人による征服、虐殺、略奪による。かれらは、王を人質に帝国中から黄金の品を集めさせ、それらを全て溶かして金塊にしてしまった。彼らの太…

文明とは衰えるもの

上野の国立科学博物館で開催されている「インカ帝国展」を観に行ってきた。 インカ文明はスペイン人によって破壊と略奪の限りを尽くされたせいか、きらびやかな装飾品などの大きな目玉となる展示物はなかった(ミイラくらい)。でも個人的には、知りたかった…