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調和的でサスティナブルな社会・経済システムとは?変化の激しい世界で歩きながら考える。

武力で征服は同じなんだけどね

「インカ展」がそれほど面白かったわけでもないのに、思いのほかインカネタを引っぱってしまった。
過去にペルー、ボリビアを訪れた経験もあるが、以前読んだ『環境と文明の世界史―人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』の次の内容が頭に残っていたからだ。

湯浅 メソポタミア文明エジプト文明も、その支配者はおそらく遊牧民出身だったと思います。組織者、つまり家畜をコントロールする経験をもった人たちが人間もコントロールしていた。黄河文明もそうで、多くの農耕民をオルドスの遊牧民が組織していた。 (p107)


安田 …長江文明=稲作文明の場合は、文字と金属器がないわけです。文字は税金を徴収するために必要ですが、奴隷を管理する必要がなかったから、文字はいらなかったのかもしれない。金属器は戦争の道具です。あえて他人の富を奪う必要がなければ、金属器は必要なかったと考えることができるかもしれない。いずれにしても、まだ長江文明からは、文字と金属器が発見されていません。 (p163)


石  インカは青銅器までの段階で止まり、複雑な文字もなかったらしい。インカはまれに見る「やさしい文明」です。少なくとも古代文明の中で、ほぼ唯一といってよいほど、奴隷をもたなかった文明でしょう。
(中略)
…しかも、彼らは武力で支配しないんですね。もちろん征服は武力でしますが、そのあとは何で支配したのかというと、ジャガイモやトウモロコシの種で支配するわけです。「従わないと種をやらないよ」と。…つまり、知的所有権で支配するわけですよ。 (p164-165)

文明の興隆には、財・資本の蓄積が欠かせない。道路、橋、水道などのインフラ整備や大規模な建造物の構築には、多大な資材と労働力を必要とする。それらを、どのように調達したのか?
アジアやヨーロッパの歴史を見ると、戦争・征服による略奪、搾取と奴隷労働に拠るところが圧倒的に大きいように見える。そして、それらを効率よく調達・管理するのに長けていたのが、遊牧民・牧畜民族だったようだ。

なので、インカ帝国の支配・統治システムから、それ以外の方法でも、高度な文明は可能だという確証を得たい気持ちがあったのだった。