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調和的でサスティナブルな社会・経済システムとは?変化の激しい世界で歩きながら考える。

再び水の話

水の話に戻る。
地球上にある水の97.5%は海水で、2.5%が淡水だそうだ。さらに、その淡水のうち、69.5%が永久凍土や氷河なので、人間が利用できる水は残りの30.5%、つまり地球上の水のたった0.8%しかないということになる。これは2005年に出版された書籍からのデータなので、地球温暖化が進んだ現在はもっと割合が下がっているかもしれない。さほど変わらないとしても、それに対して人間が利用する水の量はどんどん増加している。
どのように算出したのか不思議だが、1900年は年間579k㎥だった水需要が、1950年は1382k㎥、2000年は3793k㎥、2025年には年間5235k㎥にもなるという。

その大きな理由の一つは、もちろん急激な人口増加にあるが、9/16の記事にも書いたように、単にそれだけではない。新興国の発展に伴い、生活用水が増加しているのだ。生活用水には、飲料水のほかにトイレや風呂、洗濯、掃除などに使用する水が含まれる。水洗トイレが普及し、毎日シャワーを浴びたり風呂に入る。自動車を所有すれば洗車に、庭つきの家に住めばガーデニングや芝生の手入れに水を使用する。欧米化された現代の豊かで快適なライフスタイルは、水を多用するのだ。

そのような人口増加とライフスタイルの変化が起きている新興国の最たるところが中国だろう。
都市部の人口増加は著しく、北京などはオリンピックの頃、年間40万人も人口が増えたという。自動車の所有者も増え、建ち並んだ近代的なマンションやオフィスビルには水洗トイレ。当然、生活用水の利用量は増える。
しかし、その陰で我慢を強いられているのは農村の人々である。水資源は、農業生産の7倍の経済効果がある工業用と都市部の生活用水に優先利用され、とりわけ華北部の水不足は絶望的だという。このままだと、2020年には黄河がなくなる可能性すら指摘されている。将来、中国がいよいよ深刻な水不足と食糧危機に陥った時は、まさに国家崩壊の危機となるだろう。もし内乱のような事態になれば、難民が近隣の国々になだれ込む可能性も高い。日本も対岸の火事では済まされない。

世界では、すでに5億人が慢性的な水不足で苦しんでいるという。そして2050年には、人口89億人のうち40億人が慢性水不足になると予測されている。

参考文献: 『未来学―リスクを回避し、未来を変えるための考え方』 根本昌彦・著