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調和的でサスティナブルな社会・経済システムとは?変化の激しい世界で歩きながら考える。

バーチャルウォーターと食糧危機

「バーチャルウォーター」という言葉をご存知だろうか?
日本は山や森林が多く、気候も梅雨、台風など雨が多い。日本は他国と比べて水資源が豊富で、量的な問題はほとんどない。私たちの多くはそう考えているのではないだろうか?

だが、日本は食糧の多くを輸入でまかなっていることを忘れてはならない。海外で生産される穀物や野菜、肉などを輸入するということは、それらの生産に必要な水も間接的に輸入しているのと同じことになる。食糧以外にも、綿、羊毛などの繊維、あるいは木材といった輸入品も同様である。これらを仮の水利用と考え、バーチャルウォーターと呼ぶのだそうだ。

小麦1kgを作るのに900リットルの水が、米1kgには1900リットル、鶏肉3500リットル、牛肉にいたっては1kg生産するのに1万5000リットルもの水が必要になるという。食肉の場合、さらに家畜の飼料となる穀物を育てるための水も加算される。世界の水不足は、私たち日本人の食生活にも大きな影響を与えるのだ。

たとえば、世界有数の穀倉地帯である米国中西部には、オガララ帯水層またはハイ・プレーンズ帯水層と呼ばれる世界最大級の地下水層がある。
この地下水が降雨量の少ない穀倉地帯の水源になっているのだが、以前から灌漑の過剰揚水(水の汲み上げ過ぎ)による水位低下が問題になっている。2035年には地下水が枯渇するとも言われており、穀倉地帯の耕地消失が懸念されているのである。
また、灌漑農業には耕地の塩分集積という問題もある。耕地の塩害は米国西部で深刻になっているほか、旧ソ連カザフスタンやオーストラリアなど、世界各地で問題になっているという。

数年前から、世界の人口増加と新興国とりわけ中国の穀物需要増加に対応するため、穀物メジャーによる熾烈な農地争奪戦が繰り広げられている。
しかし、ブラジルやウクライナ、ルーマニアなどで新しい農地を獲得したとしても、契約農地が今後、水不足や塩害に見舞われる心配はないと言えるのだろうか?それに、本当に深刻な食糧不足になった場合、農地のある国の政府が、穀物輸出を大幅に制限することもあり得る。

日本は、大手商社の丸紅が米穀物メジャー、ガビロンの買収を発表するなど民間企業が奮闘している。日本政府はどうなのだろう?いざというときのために、各国と食糧調達のための交渉をしっかりしているのだろうか?
世界的な食糧不足、穀物価格の異常高騰のような事態になったとき、以前のようにブロック経済圏から締め出されると大変なことになる。政府には、最悪の事態を含めたいくつかのシナリオを想定し、食糧自給率を上げることも含めて今からしっかり対策を取ってもらいたいが、、、やってるのかなぁ、、、心配。

参考文献: 『未来学―リスクを回避し、未来を変えるための考え方』 根本昌彦・著