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調和的でサスティナブルな社会・経済システムとは?変化の激しい世界で歩きながら考える。

地政学アゲイン?

地政学という学問がある。
詳しくは知らないが、政治現象と地理的条件との関係を研究するものらしい。その中でも有名な「ハートランド理論」によると、外交・防衛政策はイデオロギーなどではなく、その国の地理的条件に制約、決定されるという。

地政学では、その地理的条件により、国を「海洋国家」と「大陸国家」とに分けて考える。
「海洋国家」は文字通り海に面した国で、通商力、海運力、海軍力といったシーパワーを有し、海を支配することを目標とする国家。それに対し、「大陸国家」は大陸に国家の主軸を置き、その支配圏の拡大を目指す国家で、陸上輸送および軍備で覇権を確立したことがある。
代表的な海洋国家は、ヴェネチア、ジェノバなどのイタリアの都市国家大航海時代のスペイン、ポルトガル、オランダなどらしい。英国と米国、そして日本も、海洋国家として位置づけられている。
代表的な大陸国家は、古くはペルシャ帝国、オスマン帝国モンゴル帝国。近代ではドイツ、フランス、ロシア、中国が大陸国家とされている。

海洋国家と大陸国家は、経済面では協力しながらも、軍事的には対立するという関係になるという。たとえば、18世紀のフランスと英国、19世紀の英国とドイツ、20世紀は米国とソ連が冷戦という形で対立関係にあったというように。
ただ、冷戦時代については、確かに米国は海洋国家、ソ連は大陸国家で法則に当てはまるとはいえ、やはりこの時代に限って言えば、資本主義vs共産主義というイデオロギー的対立の色が濃かったと見る方が妥当なように思える。
そして、ソ連崩壊とともに冷戦時代が終結し、中国も市場経済を導入した現在、地政学という言葉を書籍やネットでチラホラと見かけるようになった。日経新聞編集委員の鈴置高史氏は、冷戦後の世界で、台頭する中国vs比較優位を失う米国という構図が浮かび上がってきたとき、地政学が再び重みを持つようになったのだと話している。

飛行機で人や物が世界中を行き来し、情報はインターネットや携帯で瞬時に伝わる。なぜ、いま地政学なのか?
ストラテジストの根本昌彦氏によると、今の世の中のあり方を決めたのは大航海時代であり、世界はいまだにその延長線上にあるのだという。その理由は、近代社会を成り立たせているのが貿易の要となる航路だからということである。
確かに、航空輸送やインターネットの発達で、私たちは地理的な制限から解放されたような気がするが、本当はそうではない。私たちの生活に欠かせないエネルギーや食糧、さまざまな製品と、その原材料の輸送は、今もその多くを海上輸送にたよっているのである。
遠い将来、原油でも何でも低コストで空輸できるようになれば話は別かもしれないが、特に日本のような四方を海に囲まれた国は、陸上輸送で海外から物資を調達することはできない。必然的に、海洋国家としての戦略を取ることになる。
また、陸上輸送が利用できる国々も、生産国から自国への輸入経路に他国を経由することは、その国に弱みを握られるのと同義だろう。
そして何より、私たち人類は今のところ陸の上にしか定住できない。どこに住んでいて、ご近所さんがどんなひとなのか?お隣さんとどう付き合うか?は、非常に重要だ。引越しできないなら、なおさらだ。

参考文献: 『未来学―リスクを回避し、未来を変えるための考え方』 根本昌彦・著
参考サイト: 日経ビジネスオンライン 『国際政治は再び「地政学」の時代に戻った』