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調和的でサスティナブルな社会・経済システムとは?変化の激しい世界で歩きながら考える。

ブルーゴールド

前回の記事で穀物メジャーについて少し触れたが、当然のことながら水ビジネスも活発になっている。水不足や水質汚染が新たなビジネスチャンスとなっているのである。石油ビジネスの「ブラックゴールド」に対して、水ビジネスは「ブルーゴールド」と呼ばれている。

中でも最も大きいと言われているのが、上下水道サービスだ。日本はまだだが、世界では公営サービスから民営化への転換が進んでいる。国家財政や地方財政化の悪化がその理由らしい。水道サービスの民営化率は、欧州で約80%、米国30%、アジア50%。アフリカにいたっては、ほぼ90%に近いそうだ。
欧州では規制緩和で水道ビジネスが民営化された結果、大規模なウォーター施設運営会社が出現した。ウォータービジネスを支配している企業は「ウォーター・バロン(水男爵)」と称されており、特に「水メジャー」と呼ばれる、スエズ運河で有名なスエズ(仏)、ベオリア(仏)、テムズ・ウォーター(英)の3社が水道事業の約80%を独占していると言われている。欧州企業がこの分野に強いのは、19世紀、帝国主義時代の植民地政策の影響で、インフラ整備を受注するケースが多いからだそうである。テムズとベオリアの給水人口は、それぞれ1億3000万人を超えるというから、いかに事業規模が大きいかわかる。最近では、アメリカのGEをはじめ、事業参入を狙う市場プレーヤーも増えているようだ。

これらの企業は、インフラの再整備と運営におけるオペレーションや人員の改革でムダを削減して利益を上げている。しかし、本質的に利益を追求する民間企業に、水という生命にかかわる重要なインフラを任せることには問題もある。
過疎のすすむ古い地区など、儲からない地域でのサービス廃止。途上国では、民営化により水道料金が大幅に引き上げられた結果、支払い不能で給水停止になるケースがあい次いだという。

日本でも、人口減少と産業の空洞化により、公営サービスがこのまま維持できるのか疑問視されており、民営化が期待されているらしい。本当に、その方向でよいのだろうか?私ははなはだ疑問に感じる。これは政府の存在意義にもかかわる問題だと思うのだが。。。

参考文献: 『未来学―リスクを回避し、未来を変えるための考え方』 根本昌彦・著