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調和的でサスティナブルな社会・経済システムとは?変化の激しい世界で歩きながら考える。

赤い本と赤い大国の関係

赤色の本『2052~今後40年のグローバル予測』は、今から40年前(正確には41年前)の1972年に出版された、かの有名なローマ・クラブ『成長の限界』を踏まえ、さらに次の40年を予測する21世紀への警告書(!)である。その内容は、地球温暖化がもたらす気候変動、資源枯渇、環境汚染、生態系破壊などにより、持続不可能な方向に進んでいる地球と人類の未来が描かれた、かなり厳しいものとなっている。

『The Global Warming Swindle(地球温暖化詐欺)』を見てしまった私としては、もうCO2が温暖化の主要原因だとは信じていないが、現実に巨大ハリケーンなど気象現象の激烈化や水資源の枯渇といった現象はすでに始まっている。たとえ温暖化の代わりに小氷河期がやって来たとしても、人類は基本的に同じような問題に直面することを避けられないように思う。
主著者のヨルゲン・ランダース氏は、そのために各国は、未来の資源枯渇や環境破壊を避けるための予防的な投資と、ハリケーンや洪水などの被害による事後の強制的投資が増えるだろうと予測している。

そして、そのような投資と持続不可能な事態を回避するためには、強い意志とリーダーシップ、決断のスピードが必要だとして、現在の西洋社会で支配的な4つのパラダイム―「市場経済の効率性」「民主主義政治の自己修正能力」「化石燃料に基づく持続的経済成長」「自由貿易と国際化がもたらす幸福」―が変わる可能性を示唆している。
ランダース氏は、この危機的な状況を人類が生き抜くためには、私たちが今当たり前のように享受している自由の多くを諦めなければならないのは必至だと考えているようだ。

氏によると、米国から中国への世界のリーダーシップの移譲は平和裏に行なわれ、2052年に中国は世界のリーダーになっているらしい。読者への「20の個人的アドバイス」では、子供たちに北京語を習うように勧めなさいとまで書いている。
…しかし、いくら経済発展目覚ましく、一党独裁で決断と行動力に優れているからといって、なぜここまで中国の体制を評価、支持しているのか?深刻な環境汚染のニュースを何度も見聞きしている隣国民の私としては、正直、政治的意図を嗅ぎ取ってしまう。なにせ彼の20番目のアドバイスは、「政治において、限りある資源の平等な入手は、言論の自由に勝ることを認めよう」である。

やがて一部のエリートによる管理体制のもとで、人類は何とか生きのびるほかない時代が訪れ、私たちは今、束の間の民主主義と市場経済、言論・表現の自由を味わっているのだろうか。。。

参考文献: 『2052~今後40年のグローバル予測』 ヨルゲン・ランダース・著