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調和的でサスティナブルな社会・経済システムとは?変化の激しい世界で歩きながら考える。

収奪的経済制度とイノベーション

このところ、ブログを書く余裕がなくなってきた。

本だけは何かしらマイペースで読んでいるが、今読んでいる、『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』がなかなか面白い。

歴史があまり得意でない私は、さしたる根拠もなく、技術革新はいつの時代も基本的には尊ばれ、その時代の権力者、エリート階層、商人などによって受け入れられてきたのだと、何となく思い込んでいた。だが、実際はとんでもなかった。

例えば、1589年にウィリアム・リーが「靴下編み機」を発明し、特許を得るためエリザベス女王に見せたとき、女王の反応は特許を与えるどころか、この発明が民の職を奪って物乞いに身を落とさせるであろうと、けんもほろろだったそうだ。
ハプスブルク家の皇帝フランツ一世は産業の発展に反対した。1802年、ウィーンに工場を新設することを禁じ、鉄道の敷設にも反対した。ロシアのニコライ一世も、同様にモスクワの工場の新設や鉄道の敷設、産業博覧会を禁じた。

1445年にドイツで発明された活版印刷機は、西欧ではその重要性がすぐに認識された。だがオスマン帝国では、イスラム教徒に対してアラビア語の印刷物の作成が禁じられ、1727年にようやく領土内での印刷機の設置許可が下りたときも、印刷物はすべて宗教と法の専門学者、カーディーの念入りな検閲を受けなければならなかったという。

なぜなら、技術革新は創造的破壊を引き起こし、収入や富だけでなく政治権力も再配分するからだと、著者たちは主張する。
収奪的な経済制度においては、エリートが自分たちの経済的特権や政治権力を維持するため、イノベーションをことごとく拒絶・排除してきたのだ。

参考文献: 『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』 ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン・著