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調和的でサスティナブルな社会・経済システムとは?変化の激しい世界で歩きながら考える。

雇用チーズを食べたのは誰?

ちょっと気になっていた本、『機械との競争』の著者、エリック・ブリニョルフソンMIT教授のインタビューがオンライン記事になっていた。ありがたい、これで読んだ気になれる(笑)。

インタビューによると、そもそものきっかけは、米国で2年前にイノベーションの停滞を懸念する声が出ていたことに端を発するらしい。それが完全な間違いであると思っていたブリニョルフソン氏は、共著者のアンドリュー・マカフィー氏とともに反論を書くべきだと考えたそうだ。
そして、技術の進化が停滞しているのではなく、逆に急速に前進していることを示すつもりが、取り組むうちにある重要な問いと格闘しなければならなくなったという。

それは、なぜ米国ではそんなにたくさんの人が職を失っているのか?イノベーションが進み生産性が向上したのに、なぜ賃金は低く、雇用は少なくなったのか?という問題だ。
その理由は、「デジタル技術の加速」は生産性の向上をもたらしたが、新しい技術についていけない人々を振り落としてしまったからだという。アメリカという国全体の富は増えたが、分け前は上位1%が取っていき、残りの多くの人の分け前は減ってしまったのである。
氏曰く、以前からこのような議論はされてはいたものの、技術の変化がいかに速いかが正しく認識されていなかったかららしい。以下、インタビューの内容を簡単にまとめると、

技術は常に雇用を破壊する。そして常に雇用を創出する。ただ、1990年代の終わりくらいまでは、古い仕事が姿を消すのと同じくらいの速さで新しい仕事も生まれたのでバランスが保たれていた。
ところがこの10年、技術による雇用破壊が雇用創出よりも速く進んでしまった。かつては生産性の伸びにしたがって雇用も伸びてきたのが、97年頃に雇用が置いていかれるようになった。
氏はそれを、「グレートデカップリング」という言葉で表現している。
つまり、今までは生産性の向上によって問題が解決すると考えられてきて、実際それは97年までは正しかった。だが、今や生産性の向上そのものが全員の利益を保証するものではなくなってしまった。

氏は「グレートデカップリング」をもたらしたデジタル技術の特徴として以下の3つを挙げている。

  1. 指数関数的に発展する。人類の歴史に登場したどんな技術よりも速く進化し、人びとはそれに追いついていけなくなっている。
  2. 以前の技術よりも、より多くの人に影響を与える。農業などにおける過去の技術進化は限られた集団だけに影響したが、今日のコンピューターの発展は、ほとんどの働き手に影響を与えている。
  3. 新たなテクノロジーが「デジタルであること」。ひとたび何かが発明されると、ほとんどコストなしでコピーができ、そのコピーを即座に世界のどこへでも送り、何百万人という人が同じものを手にすることができる。過去200年とは全く異なる影響を雇用にもたらす。

米国の製造業における雇用縮小の背景として、生産拠点の海外移転や中国の台頭が挙げられてきたが、調査の結果、中国では製造業で働く人が97年に比べ2000万人以上少なくなっているということが分かった。雇用は米国から中国に移ったのではなく、米国と中国からロボットに雇用が移ったというのが正しい。

このようなミスマッチに直面しているのに、組織や制度はいまだに20世紀にデザインされたもののままでいる。テクノロジーの変化に合わせて、それらも変えなければならないが、それは大きな挑戦になるだろう。
われわれは、デジタル技術と雇用を融合できる新たな道を考える必要がある。

著書の中では、解決策として19の項目が挙げられているそうだが、さすがにそれは「本買って読んでね!」ということらしい。当たり前だ(笑)。
でもその中でも特に重要なのが、教育改革と起業家精神、そして規制緩和だという。
コンピューターが雇用を減らしているからこそ、起業家を支援し、新産業を興して新たな雇用を生み出す次なるヘンリー・フォードスティーブ・ジョブズビル・ゲイツが必要なのだということらしい。

あー、結局そういうオチか、、、と、ちょっとガッカリ気味に納得。。。

参考サイト: 『「機械との競争」に人は完敗している―エリック・ブリニョルフソンMIT教授に聞く』 日経ビジネスオンライン 2013年4月18日(木)